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クリエイターズ・チョイス55:ポスト3・11の希望を考える美術作家 ヤノベケンジ

未来の廃墟、そして希望をテーマに制作を続ける美術作家。

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核時代の箱船「ラッキードラゴン」は、第五福竜丸の生まれ変わり。

 2007年にヤノベさんは、それまでに手掛けた一連の作品を、トらやんとその仲間たちが繰り広げてきた冒険に見立てた絵本『トらやんの大冒険』を出版する。森に住むトらやんは、仲間とともに箱船に乗り込んで大洪水を乗り越え、道で拾った光のかけらを大きな太陽へと成長させていく。

 「その後、再び第五福竜丸展示館を訪れたときに、館長さんに『この絵本良いですね、ここに出てくる木造船って第五福竜丸のことなんですね』って言われたんです。自分も意識してなかったですけど、トらやんが絵本の中で乗り込んだ箱船は第五福竜丸で、トらやんは長い時間をかけてそれを改造してたんじゃないかと僕は思ったんですね」

 2009年、ヤノベさんは大阪府と大阪市が共同で主催した「水都大阪」というアートイベントに参加し、《ラッキードラゴン》という火を吹くドラゴン型の船を発表する。言うまでもなく「ラッキー=福」、「ドラゴン=龍」であり、第五福竜丸をモチーフにした作品だ。実はこのイベントの直前まで、大阪府は橋下府知事のもと文化予算の削減を進めていた。だが、実際に乗り込むことのできる体験型の作品《ラッキードラゴン》は多くの人の支持を集め、橋下府知事もその結果に納得。ヤノベさんは大阪文化賞を受賞し、大阪の街をアートでいっぱいにする「大阪カンヴァス推進事業」の開催も決まった。

 「人類のネガティブな遺産を語り継ぐ船だった第五福竜丸は《ラッキードラゴン》という船になって、人々のポジティブなイマジネーションをかきたてる存在になったんじゃないか。それが大阪の街を変え、人を変えていく起爆剤になったんじゃないかと思ったんです」

 あの「原発震災」以降、世に不安は溢れているが、ヤノベさんはそうした不安をテーマに作品を作るつもりはないという。むしろそうした時代だからこそ、恥ずかしいくらい希望に満ちたものを作りたい、と。既に被災地に幾度となく入り、福島県立美術館では「トらやんの方舟計画」と題した展覧会も開催中。さらに複数のプロジェクトを準備中のヤノベさん。その活動からは今後も目を離せない。

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Text : 樋口ヒロユキ

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プロフィール

ポスト3・11の希望を考える美術作家

ヤノベケンジ ( Yanobe Kenji )

1965年大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院在学中の1990年、生理食塩水を入れたタンクの中へ浸かって鑑賞する《タンキング・マシーン》で注目を浴びる。1990年代後半、ガイガーカウンター付き放射能感知服を着てチェルノブイリなどを訪ねる「アトムスーツプロジェクト」を発表。以降、子どもの命令しか聞かない高さ約7mのロボット《ジャイアント・トらやん》や、稲妻状の放電をする巨大球体《黒い太陽》、第五福竜丸をモチーフにした《ラッキードラゴン》など話題作を次々に発表し、注目を集め続けている。

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作品

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クリエイターズ・チョイス

子どもに大人気のキャラクター クリエイターズ・チョイス55:「トらやん」の誕生秘話。 ヤノベケンジ