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クリエイター・ファイル38:“フォトグラムで少女の星座を描く美術作家”三宅砂織

フォトグラムで星座のような少女像を描き、いま注目を集める若手美術作家。

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和の線描でも、洋のデッサンでもなく、「点で描く」という第三の描法。

三宅さんのフォトグラム作品は、夜空に浮かぶ星のようなドットで描かれ、しばしば星座に例えられる。三宅さんはマチ針の頃から、こうしたドットによる描画を始めた。アクリル絵の具で描かれた《夜の山羊》(2004)や《ステップ2》(2004)、ケータイのデコシールを貼り付けた《ガール》(2006)なども、やはりドットで描かれている。だが、なぜ線でなく点で描くのか。

「高校で学んだ日本画は、モノの輪郭を線で描く『骨描き』という手法が基本。線の表現はずっと好きだったので、その後の版画でも重要な要素でした。それがあるとき、煙とか光とかいった輪郭で仕切れない部分、境目がはっきりしないグラデーション部分が気になりだした。グラデーションはグラデーションのまま色面で表現すれば良かったんでしょうけど、当時私は『すべてのイメージを線で表現する』というルールを決めて描いていたんですね。この部分をどう表現する方法として、はっきり見えるところは実線、曖昧なところは隙間のある線=点線という絵ができあがりました。点線はやがて小さな円の連続する点々になって『すべてのイメージを点々で表現する』というルールになったんです」

輪郭線による描法は、高松塚古墳の時代からあり、日本人の骨の髄まで染み込んだ描法だ。現在でもこれは同じで、日本のマンガやアニメなどでは、いまだに輪郭線そのものの美しさを重視する。これに対して西洋美術は、あくまで立体としてモノを描くため、基本的に輪郭線は用いず、色と明暗のグラデーションで、描く対象を把握する。三宅さんの点描は、そのどちらともつかない不思議な手法だ。

日本では輪郭でモノを捉えるのが自然なのに、西洋では面とグラデーションで立体を描く。この矛盾を逆手に取って、線描の復権を訴えたのが村上隆さんだ。日本人らしい線描を、自信を持って世界に発信しようという村上さんの主張は、日本全体が自信を失いかけていたゼロ年代の初頭、大きな説得力を持って受け入れられ、以降の現代美術では、日本的な線の美しさを打ち出した作家が数多く生まれた。だが、そこには「日本的美術か西洋的美術か」という、二者択一の思考があったと言える。三宅さんが採ったのは、そのいずれでもない曖昧な点の連なり、二者択一の問い自体を無効にする、ドットの群れだったのである。

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Text : 樋口ヒロユキ

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プロフィール

美術作家

三宅砂織(みやけ・さおり)

1975年、岐阜県生まれ。京都市立芸術大学卒業後、英国Royal College of art交換留学。2000年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画(版画)専攻修了。2003年ごろより、透明なフィルムにドローイングを描き、印画紙に焼き付けてプリントする「フォトグラム」による作品制作を開始。2008年以降は韓国やスイスなど海外でのグループ展にも活発に参加。2010年3月14日〜3月30日、上野の森美術館で開催される「VOCA展2010」の出品作家として選出され「VOCA賞」を受賞。今後の活動に注目が集まっている。

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