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クリエイター・ファイル36:“渦巻くピンクに本質を見る美術作家”西山美なコ

ニット界の伝道師とのコラボで、展示室いっぱいのニット製作品を展開。

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阪神大震災とNYでの体験を経て、「社会的ピンク」から「儚さの表現」へ。

「私を選んで!」と叫ぶかのような、少女文化と性風俗のピンクを描く。こうした強い社会性を帯びた初期作品を、西山さんは「社会的ピンク」の作品群と呼ぶ。事実、ある時期の西山さんは、フェミニズムの代弁者のようにも評された。女性を取り巻く文化の矛盾を、美術で皮肉るフェミニスト、とされたのだ。

「その頃は『私、フェミニズムなんて、そんな難しいこととか理論とか、全然考えてません』と言ってたんですが、いまから考えたらフェミニズムなのかな、と思います。いまでもフェミニズムがどういう意味かなんて全然よくわかってないですけど(笑)」

だが、社会の矛盾を挑発する、ドギツくて刺激的な「社会的ピンク」の作品から、やがて西山さんはゆっくりと離れていく。1995年の阪神大震災が、おそらくはその転換のきっかけだったのだろう。そう、西山さんは振り返る。その後のニューヨークでの滞在も、そうした転換を後押しした。

「震災直後の神戸を見ているうちに、アートを何のためにやっているのかわからなくなって。その後、助成金を受けて、ニューヨークに滞在することになったんですが、向こうの先端的なアートシーンを見て回るうちに、次から次に生み出される大量のアートが、ゴミのように見え出したんです」

震災の廃墟には大量のゴミが、アート市場には膨大な作品が、自分のアトリエには材料の山が溢れる。圧倒的な量のモノに圧迫され、どうにも手が動かなくなった。だが、そうした「過剰なモノ」に対する倦怠感のなかで、西山さんは自分に響き合う、あるものを見つける。シュガークラフトの技法である。

シュガークラフトは砂糖や卵白、ゼラチンなどで作るお菓子の技法だ。温度や湿度を管理すれば保存できるが、普通の室内で置いておくと、やがては溶けて崩れ去る。そうした儚いものの中に「真なるものの姿」を、西山さんは見いだしたのだ。そして震災の翌年にあたる1996年、西山さんはシュガークラフトによる、作品制作を開始する。ティアラの形をしたもの、指輪の形をしたもの、ハイヒールを象ったもの。より少女性、女性性を強くイメージさせる、儚い砂糖菓子の作品群である。

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プロフィール

美術作家

西山美なコ(にしやま・みなこ)

1965年、兵庫県生まれ。美術作家、京都精華大学非常勤講師。京都市立芸術大学卒。大学在学中から活発に個展を開催、大学院の修了制作で、リカちゃんハウスを思わせる等身大のインスタレーション《ザ・ピんくはうす》を発表、注目を集める。以降、国内外での個展、グループ展多数。1997年にはAsian Cultural Councilの助成でニューヨークに6ケ月間滞在、2000年にはカナダで滞在制作。現在は金沢21世紀美術館で、広瀬光治と西山美なコのコラボ展“ニットカフェ・イン・マイルーム”を開催中。(2010年3月22日まで)

作品

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