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クリエイター・ファイル22“ポスト・ポストモダンの建築家”玉置順

シンプル、けれども奥深い。ポストモダンの次を探る建築家。

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シンプルな中に逆説の深い味わい、初期の代表作「トウフ」の秘密。

私たち日本人は西洋の建築を見るとき、往々にしてそのぶ厚い壁に圧倒される。多くの場合は装飾などで、その量感は弱められてはいるものの、積み石でできた壁の存在感は、安定感があって頼りがいがある。逆に日本の建築の壁は、あまりにも薄くできている。日本の建築は木の柱で建っていて、壁は窓(間戸)の変形として柱と柱の間を間仕切る役目を果たすのみ。西洋のそれと比較すると極端に薄く、存在感がない。その代わりに屋根はどっしりと存在感があり、壁は意識される事が少ない。

こうした日欧の違いをさして「日本は屋根の建築、西洋は壁の建築」とよく言われる。現代に至っても日本人には、この感覚が濃厚に残っている。だから、たとえ木造でなくとも、日本建築は西洋に比べ壁が薄く、軽快さの方に興味が行き、重量感や安定感を建築の魅力に取り入れることが少ない。そんな日本の建築風土のなかで、玉置さんが造った代表作「トウフ」(1997)は、ひときわ異彩を放っている。

「建築は空間をつくるものです。けれども空間は建築以前からそこにあり続けていたわけで、実際には壁や屋根で空間を切り取って囲い込んだだけにすぎないのです。これではなかなか空間は実感できません。中国の黄土平原には、地面や山肌をくりぬいて造る『ヤオトン』という住居があります。くりぬくという『建築行為』が、まさにリアルな空間をつくっているのです。」

トウフはこの例を模したもので、真っ白なトウフをくりぬいて造ったような住宅。内装には障子や畳を使っているが、外壁も内壁もシックイの白一色で仕上げられ、くりぬかれた部分が明確に判り、まさに空間を体感できる。そして建築自体にも、西洋建築の厚ぼったさや安定感がある。この作品は海外でも感心が高く、ヨーロッパ圏のほとんどの国の雑誌に掲載、注目を集めることになった。

「けれども実際には岩石をくりぬいたものではないのですよね。石膏ボード等の板材を組み合わせて中空の体積を造り、上から漆喰を施して、いかにもぶ厚い壁のように見せた。いわばフェイクの『厚み』なわけです」

実際には中空の石膏ボードのなかは、トイレや納戸として無駄無くプランニングされているが、コンセプトとしては重量「感」や安定「感」を出すための造作なのだという。老夫婦からの依頼を受けて造られたこの作品には、老後を過ごす上での安心感をもたらす、重厚な空間が包み込まれている。いまでは当たり前となったバリアフリーや、認知症防止のための「一冊の本のためだけの本棚」など、随所に施主のための工夫が光る。

「トウフ」といういかにも和風のタイトルだが、実は中国の伝統家屋が下敷きにあり、西洋的な「壁の建築」の感覚がある。しかもいっけん重厚に見えて、石膏ボードの中空構造。いっけんシンプルな外見に、味わい深い逆説がある。京都の濃厚なトウフのような、味わいのある建築である。

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プロフィール

玉置アトリエ

建築家:玉置順(たまき・じゅん)

1965年、京都府生まれ。近畿大学大学大学院修士課程修了(古谷誠章研究室)。鈴木了二建築計画事務所、根岸一之建築設計事務所を経て、1996年に玉置アトリエ設置。翌年、初の作品「トウフ」を発表し、「住建実施作品コンテスト」で最優秀賞、「第3回関西建築家新人賞」を受賞。以後、「ラッパ」、「ハカマ」、「タイツ」などの作品で、国内外のメディアに登場。ユニークな作品をコンスタントに発表している。

作品

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クリエイターズ・チョイス

手描きのスケッチで練り上げる。 クリエイターズ・チョイス22「お気に入りはトンボ鉛筆社製の文房具」