世界が認めた光の曼荼羅、「The World」シリーズ。
桑島さんの作品を買い上げてコレクションしている個人や財団には、実に錚々たる顔ぶれが並ぶ。ルイ・ヴィトンことLVMH。森美術館の初代館長、デヴィッド・エリオット。日本国内では一、二を争う現代美術のコレクター、精神科医の高橋龍太郎。まさに世界が認めた才能である。複製の効く写真でありながら、大型の作品は一点百万円を優に超える。しかも契約しているギャラリーは、90年代以降の日本のアートシーンを牽引してきた名門ギャラリー、ラディウム レントゲンヴェルケだ。
「レントゲンの主宰の池内務さんと、最初にお会いしたときには、いままでどこにいたんだと言われました。この完成度は何なんだ、なぜいままで世に出てこなかったんだ! と。契約はほとんど即決でした。取り扱ってもらえますでしょうか、もちろん! と」
そんな桑島さんが創り出すのは、一見したところ曼荼羅のように見える、幾何学模様のような作品だ。だが「The World」シリーズ、そしてその続作「Vertical / Horizontal」シリーズは、抽象絵画でもCGでもなく、普通にモノを撮った「写真」なのだという。複雑に光と影が絡み合い、乱反射するような光の曼荼羅。一体何をどう撮ったら、こんな不思議な図形が生み出せるのだろう?
「グラスとかデキャンタですね。厳密に水平垂直をあわせて、テーブルの上に積みあげる。言ってしまえばシャンパンタワーと同じ理屈です。それを後ろから一灯だけでライティングして、4×5のアナログカメラで撮影する。そうして撮影したものを、コンピュータで合成するんです」
コンピュータで合成と書くと「コピー&ペーストして左右反転を掛けたのかな」と思われそうだが、そうではない。実はこの作品、左右の対称性はすべて手作業で作り出されたものだ。作家自身が厳密にグラスを並べ、カメラと対象の水平垂直を正確にあわせることで、超精密な左右対称の図形を創り出す。肉眼ではコピー&ペーストと見分けがつかないほどだが、カメラについている水準器でも感知できないほど、高精度な位置合わせの作業を行う。この恐るべき緻密さが、世界の目利きを唸らせてきたのである。