プロとして磨いた複写技術を支えた、愛機、トヨビュー4×5GB。
桑島さんは自分の作品づくりを「鏡を覗き込むようなもの」だという。スポンサーがいて代理店がいて、他人の望むものを撮る広告の世界とは逆に、何をどう撮っても構わない。それだけに、自分は何を撮りたいのか、自分はどんな人間なのか、ひたすら考えざるを得ないというのだ。
「金魚の『THE LIFE』シリーズは、子どもの頃に金魚を飼っていた思い出、子ども時代の自分を振り返った作品です。同様に、グラスを真正面から正確に撮った『The World』シリーズは、会社員になって複写作業に明け暮れていた頃の自分、光を介して写真とその撮影技術に正面から向き合った自分を、一つの形として昇華させた作品ですね」
こんなふうに桑島さんの作品には、いつも桑島さん自身の人生が刻み込まれている。最新作の「Eupholia」シリーズも、子ども時代の桑島さんと、社会人になってからの桑島さん、両者を含み込んだ作品だ。子どもの頃の自分が遊んだオモチャを、プロの複写技術を活かして構成した立体作品だからである。
このように複写技術は桑島さんの、まさに原点にある技術だが、そんな桑島さんの複写技術を、長年支えてきたカメラがある。「トヨビュー4×5GB」、大阪府豊中市のカメラメーカー、酒井特殊カメラ製作所の製品である。高級機種へのこだわりは、それほど強いわけではない。何10万円もするハイエンド機種を選ぶより、中堅機種でもいいから手に馴染んだカメラを使いたいと思う方だ。愛用のトヨビュー4×5GBも、1990年当時で25万円程度の中堅機種。それまで使っていたカメラと、操作法が似ていたから選んだという。
「それまで使っていたカメラは、カメラの両側に軸が着いている、両軸タイプの機種でした。けれども、これが生産中止になって、片軸方式に変更になった。片軸のカメラなら同じメーカーのものを選べたんですが、両軸で調整する動作が体に刷り込まれている。ネジの位置やネジ癖が体で飲み込めてないと、精密な撮影の仕事はできないんですね。それで従来と同じ両軸タイプだった、トヨビューのカメラを選んだんです。プロが使用する上での性能も、全く問題ありませんでした」
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