世界に進出する日本の恐怖、ホラーには大きな夢が拡がっている。
集めに集めた幽霊話は、さらに思わぬ福をもたらす。関西テレビ京都チャンネルの番組『京都魔界案内』を担当することになり、取材で訪れたロケ先で、奇妙な人物と出会ったのである。全身黒ずくめに金髪の長髪。それに黒革の指ぬき手袋。もしやと思って話しかけると、京極夏彦さんだった。ロケに行ったのは京都の三大奇祭として知られる、広隆寺の牛祭り。同好の士だけに、同じ祭を見に来ていたのだ。
「話しかけると以前から僕の本を読んでいてくれて、立ち話するうちにノリで番組に出てもらえることになった。予算ないない言うてたのが、タダでその場で喋ってもらったもんだから、いきなり豪華ゲストの飛び入り番組になった。関西テレビは大喜びですわ(笑)」
京極さんとはその後も縁が続く。雑誌『幻想文学』編集長の東雅雄さんとともに「怪談の怪」を立ち上げることになったのだ。こうして幽霊と妖怪の結ぶ奇縁は、どんどん拡がる。新耳袋のケータイ・コンテンツ版を監督した新人、清水崇さんもその一人。当時は専門学校を出たばかりの清水さんは、のちに新耳袋のアイデアも活かして、ホラー映画『呪怨』を監督。映画はハリウッドでリメイクされることになり、興行収入全米一位という快挙を成し遂げたのだ。昨年は自身も、長編実録怪談『怪異実聞録・なまなりさん』(メディアファクトリー)を上梓した中山さん。いまやすっかり実話ホラーの大家である。
「ホラーは好きですし怪談の収集は今でもやってるんですが、実は古代史にも興味があるんです。西宮から神戸一帯には、“くだん”という牛の化け物の伝説がありますが、そのルーツを辿っていくと、どうも聖徳太子とのつながりがあるとわかってきた。大胆な仮説ですが、聖徳太子はもともと仏教徒ではなく、牛を生贄に捧げるという、まったく別の宗教の信徒だったのではないか、というのが僕の考えです」
この仮説をもとにしたセミ・ノンフィクション『捜聖記』は今年、文庫化が決定。もちろん、こうした古代史ノンフィクションだけでなく、映画やテレビの仕事も意欲的に手がけたいと中山さんは語る。恐怖には大きな夢がある。奇妙な言い方だが、中山さんを見ていると、そんな気がしてならない。
プロフィール
作劇塾
作家:中山市朗(なかやま・いちろう)
1959年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学映像計画学部卒業後、和泉聖治監督の映画『魔女卵』で、制作進行を務める。テレビドラマ、映画の助監督を経たのち、黒澤明監督『乱』のメイキング現場演出を担当。1990年、木原浩勝との共著『新・耳・袋 あなたの隣の怖い話』(扶桑社)を上梓。『新耳袋』(メディアファクトリー)として復刊、シリーズ化され、300万部の売上を記録。ホラーやお笑い番組の構成作家のほか、2004年からは『中山市朗 作劇塾』の塾頭も務める。
