福をもたらした幽霊話、呪い除けの秘訣は「怖がらないこと」。
そんな熱血映画青年の中山さんだが、映画青年にありがちな、オタクっぽい蒐集癖があった。映画のビデオやDVDは言うに及ばず、サントラや落語などのCDの類、切手やコインに怪獣フィギュア。集めているものを挙げればキリがなく、意外なものまで集めていた。身近な人の体験した幽霊話、怪談である。これがひょんなことから目にとまり、大学時代の同級生、木原浩勝さんとの共著で『新・耳・袋』を出版することになった。発売当初は数万部の売れ行きだったが、これが思わぬ余波をもたらす。
「関西テレビで深夜にホラー番組をやることになって、その構成台本の仕事が回ってきたんです。レギュラーゲストは稲川淳二さん、タイトルは『恐怖の百物語』。これが放映中にどんどんスタジオで怪奇現象が起こって、どえらい数字が出た。裏番組は『11PM』の後番組、当時最強の視聴率を獲っていた『EXテレビ』でしたが、それを抜いてましたからね」
これが出発点となり、中山さんは素人の勝ち抜きお笑い番組『爆笑BOOING』の構成を手がけるように。以降、テレビの構成作家へと転身するのである。さらに『新・耳・袋』は『新耳袋』とタイトルを改めてシリーズ化され、トータル300万部を売り上げた。構成作家としての地位とベストセラー作家の地位、両方を手にするきっかけになったのだから、まったく幽霊様々である。しかしそれにしても、題材は絵空事のフィクションでなく、なにせ全て実話である。呪いや祟りはなかったのだろうか?
「執筆中はいろいろありましたよ。窓が閉まってるのに風が吹いたり、かけてるCDが変わってたり。呪い除けの秘訣は、書くと人の迷惑になる話は書かない、ということですね。あと、大事なのは怖がらないこと。聞いたらさっさと人に言う。『リング』に出てくる呪いのビデオ、あれと一緒です。とにかく広範囲に広めてしまえば、呪いがかかるときは一斉にかかる。僕の場合は300万部売りましたから、何か祟りがあるとしたら、300万人が突然消滅するはずです(笑)」
プロフィール
作劇塾
作家:中山市朗(なかやま・いちろう)
1959年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学映像計画学部卒業後、和泉聖治監督の映画『魔女卵』で、制作進行を務める。テレビドラマ、映画の助監督を経たのち、黒澤明監督『乱』のメイキング現場演出を担当。1990年、木原浩勝との共著『新・耳・袋 あなたの隣の怖い話』(扶桑社)を上梓。『新耳袋』(メディアファクトリー)として復刊、シリーズ化され、300万部の売上を記録。ホラーやお笑い番組の構成作家のほか、2004年からは『中山市朗 作劇塾』の塾頭も務める。
