路地のある町が好きで、もう15年もここに居ます。
松本雄吉のねぐらがあるのは下町風情が残る大阪、“空堀商店街”にあるビルの一室。劇団事務所も兼ねたこの部屋には、ほぼ毎日、劇団員やスタッフがどやどやとやってきて、打ち合わせをしたり、小道具を造ったり、舞台模型を仕上げたり、ビールや酒を夜中まで飲んだりしている。愛猫の半助は、みんなのアイドル。本棚や窓際にちょこんと座って、ご愛嬌。
―“空堀商店街”で暮らして、どれぐらい経ちますか?
「もう、15年ぐらいになりますね。その前は天王寺にいたんですよ。路地が好きなんでね、路地のある町に住みたかったんです。そしたら、知り合いが空堀を勧めてくれて引っ越しました。大通りと違って、路地は落ち着くでしょう。この辺りはまだ古い日本家屋や長屋が残っていますし。歩いているとねえ、面白い風景に出会えるんですよ。路地の魅力ですか・・・そうですねえ・・・建物と建物が異様に寄っている感じとか好きですね。あとは、迷路性でしょうか。路地と路地から見える海とか、路地と路地から見える空とかね・・・絵になるんですよね。無機質に切り取られた青空とかね。」
―確かに維新派の舞台には“路地”がよく登場しますね。松本さんご自身は、都会と田舎はどちらがお好きなんですか?事務所には、植物がたくさん置いてありますが・・・。
「緑が好きなんです。“緑色”が好きなのかもしれませんが。僕、どこにいっても緑色ばっかり見ていますからね。緑の色の多さ、深さに惹かれるところがあります。でも、大自然の中にある緑は苦手かもわかりません。田舎に行くのは大好きですが、暮らすのは都会になるんでしょうかね。箱庭的なもの・・・人口空間に緑を押し込んだ感じが好きなんでしょうね。この感覚、狭い土地に住んでいる日本人的発想かもしれませんが。」
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プロフィール
維新派
主宰/松本雄吉(まつもと・ゆうきち)
劇作家・演出家。大阪教育大学で美術を専攻。1970年に「日本維新派」を立ち上げる。巨大な野外劇場を劇団員自らの手で建設、数ヶ月間、集団生活をしながら舞台を作り上げる特殊なスタイルが特徴。「喋らない台詞、踊らない踊り、歌わない音楽」をコンセプトとした表現スタイルは「ヂャンヂャン☆オペラ」と呼ばれ、その特異なパフォーマンスアートは日本のみならず海外からも注目されている。代表作は、奈良室生村の野球グラウンドを全面使用した『さかしま』、岡山県は瀬戸の離島、銅精錬所跡地内に劇場を建てた『カンカラ』など。同作品は第二回朝日舞台芸術賞を受賞。現在、2008年秋に開催予定の野外劇“びわ湖水上舞台”に取り掛かかる。