色鉛筆と万年筆で「手」を使え。いま、人を育てる40代。
アナログ派を自認する森井さんは、色鉛筆と万年筆が手放せない人だ。客先に提出するラフも、暖かい手描きの線で描かれたドローイングが多い。ゆるやかな線で描かれたスケッチは、時としてコンピュータよりも確かに質感を伝える。色鉛筆はメーカーも色もまちまちのものを、無造作にペンケースに突っ込んでいる。万年筆はぺんてる社製の使い捨てのもの。だが、まったく同じ万年筆を常に何本も持ち、「これがなければ何1つできない」と笑う。
もともと収集癖やモノへのこだわりがあるわけではない。「家に行ったらビックリするくらいモノがないですよ」ともいう。ましてブランド志向でモノを選ぶわけでは全くなく、ぺんてるもブランド名で選んだのではない。単に描きやすく使いやすい、手になじむ万年筆だからこそ、10年以上にわたって使い続けているのだ。そう、森井さんのキーワードは「手」。若手にも「手を動かせ」と指導する。
「若い子にいつも言うのは、まず絵を描きなさい、ってことなんですよ。CADを使うのは良いけれど、客先で打ち合わせして“持ち帰って考えます”では、インパクトもスピードも失われる。客先にいるとき、その場で描いて打ち合わせをすれば、仕事のスピードもクオリティーもまったく変わってきます」
40代を迎えた森井さんにとって若手育成は、もはや避けて通れない課題だ。設計部門のほか飲食部門があり、東京・大阪あわせて10数名の若手社員を抱える。創業と同時にオープンした「SHUHARI osaka」以来、「SHUHARI dolce」「SHUHARI 甘六」と、現在は9店舗を営業する森井さん。近年では新規に出店する際には、若手に仕事を任せているという。自分はいつか会社からいなくなるが、そのあとにも会社は残る。社員が独り立ちして仕事ができるよう、クライアントからの仕事を任せる前に、まずは直営店舗でのびのびと仕事をさせる。デザイン力や店舗経営のノウハウを、実体験を通じて学ばせるためだ。
「このまんま仕事仕事で突っ走ってたら、自分の時間が全くない人生で終わってしまう。仕事は当然重要ですが、やっぱり自由に旅をしたり考えたりする時間も欲しい。そのためにも若手をいまから育成して、10年後には“自分がいなくても動くシステム”を、社内に作っておきたいんです」
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プロフィール
(株)カフェ
空間デザイナー・飲食店経営/森井良幸(もりい・よしゆき)
1967年、京都府生まれ。京都芸術短期大学中退後、設計事務所、内装会社勤務を経て(株)カフェ設立。カフェ経営に携わるとともに、ブティックやクラブ、ダイニングやカフェなどの内装設計を手がける。現在は集合住宅や複合商業施設など、建築物の設計も手がけ、9店舗の飲食店を経営。代表作にクラブ「SAZAE」(大阪・梅田、2004年)、美食ダイニング「米門」(大阪・梅田、2005年)、複合商業施設「KYOUEN」(京都・京阪三条、2003年)など。
(株)カフェ
http://www.ca-fe.co.jp/