そしてこれからの世界のために、ひとりの人間としてできること。
「僕が7年間お世話になったエスプリのオーナー ダグラス・トンプキンスさんという人は、素晴らしい方で、自然保護団体にも所属しているんです。ダグラスさんは日本でも知られてるパタゴニアというブランドのイボンヌ・ショーナートさんと組んでチリの自然保護をするために、南米のチリに自然保護を目的として、個人で一番大きな土地を所有しているんですが、僕がエスプリを辞めた時、僕はイボンヌ・ショーナートさんから今後の仕事において大きな目標となるような言葉をいただいたんです。
“君はアメリカで7年間、最高のクライアントで、最高の仕事をしたはずだ。だから君はこれから社会に出たら〈ノンプロフィットオーガナイゼーション(NPO)〉にも貢献していくといい”と。お金が無くて一生懸命やってるボランティア団体や環境保護団体って、グラフィックが良くないじゃないですか。しかしそういった団体の多くが、せっかく素晴らしいことをしているのに、それを伝える(デザイン力という)術を持って無いんです。だから、そういうことを僕のこれからの大きなテーマにしていくといいから、と。だから僕らそういうプロジェクトを組んで、仕事をするんです。意外なもので、そういうところもかっこいいデザインがあれば、結構募金が集まるんです。そこはやはりオファーがあってやってますけど。日本のボランティア団体もいますよ。彼らにデザインのレクチャーをすることもあります」
八木さんは、ダグラス・トンプキンスさんが主催する自然保護団体イラヒティ(南米チリの原住のカラク族の言葉で「もとにもどす〜再生〜」を表す)の活動に参加している。八木さんの事務所でも参加する場合、大きなプロジェクトになると1ヶ月オフィスの他の仕事をストップして作業にあたることもあるのだとか。ちなみにイラヒティの活動は、全てボランティアである。
プロフィール
Tamotsu Yagi Design
八木保(やぎ・たもつ)
1949年、神戸生まれ。浜野総合研究所での制作活動をきっかけに、1984年、エスプリ*のアートディレクターとして渡米。広告をはじめ、カタログ、パッケージ、プロダクト、ストアサイン等のビジュアルコミュニケーションを手掛け、世界中から高い評価を得る。1986年、AIGAリーダーシップ賞を受賞。1991年、Tamotsu Yagi Design(サンフランシスコ)を設立。1994年には、ベネトンの香水『TRIBU(トリブ)』ボトルデザインで、クリオアワードを受賞。100点にも及ぶデザインワークがサンフランシスコ近代美術館のパーマネントコレクションに選ばれている。デザインを通してのにも数多く取り組み、1995年には、芸術分野で活躍するアジア人に与えられる貢献賞をアメリカ政府より受賞。枠にとらわれない独自のデザインワークで、世界的に注目を集めている。
*エスプリ……世界40ヵ国640店舗を展開。メンズ、ウィメンズ、キッズへ向けた国際的カジュアルファッションブランド。