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クリエイターズ・チョイス9“「イラストレーター」の仕事を広げた男”佐藤邦雄

逆境を支えた山本周五郎と常に「次」をさぐるためのネタ帖。

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山本周五郎の『ながい坂』が、若き日の逆境を支えてくれた。

佐藤さんは「努力の人」だ。昼はもちろん、夜も働く。いまはおカネにならなくとも「次」におカネを生むはずの「何か」を創るために働くのだ。結果、社長業でもイラストでも成功した佐藤さんだが、生涯に一度だけ「無茶をしすぎた」と振り返る時期がある。昼はデザイナー、夜はイラストレーターの2役をこなしたエーシー時代だ。夜も昼もなく働きづめに働くうち、体が無言の悲鳴を上げた。ある日、胸にしこりができていた。学生のときに患った病気が再発したのだ。
「2回目やからね、もう今度は癌やなと思ってね。阪大で1時間ほど手術して、当時はタクシーに乗ろうという発想がなかったんやね、手術したあと歩いて帰った。そしたら駅前に旭屋書店があって、この本の帯に“「生きる」とは”って書いてあった。そういう出会いで買って帰って」

山本周五郎の時代小説『ながい坂』は、江戸の中頃を生きたヒラ侍の息子、三浦主水(みうら・もんど)の物語だ。貧しい下級武士の子として生まれた三浦主水は、ヒラ侍だったために差別や辛酸をなめながら、人生の「ながい坂」を登り続ける。そこにライバルとして登場するのが、滝沢兵部友矩。代々エリートの家系に生まれ、並外れた才能ばかりかハンサムな顔立ちまで兼ね備えた男である。芸大出のエリートたちと机を並べた今竹スタジオを飛び出し、夜も昼もなく働いたがために、病魔に捉えられた佐藤さん。ヒラ侍、三浦主水の生きる姿に、佐藤さんは自分を重ねて読んだに違いない。

「僕も4年制の大学出てるわけやないし、この若さでこんな病気なってたら、この先どうなっていくんかな、というのもあったしね。人間、先が見えへんときは一番つらい。一番落ち込んでた時期やね。でもこの本を読んでわかったのは、逆境に立ったときに自分の力で、どうしのいでいくかが一番大切ということ。ヒラ侍と自分とを重ねて、自分がこの中に入って行ったのかもわからんね。自分自身の力で得たものと、ただ人から教えられただけものとは違うということが、この本でわかった。ほかにもいろいろ良いこと書いてあるけど、読んでたら涙出てくるから(笑)」

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プロフィール

(有)クニオ イラストレーター

佐藤邦雄(さとう・くにお)

1940年、大阪生まれ。高松、徳島で育つ。高校卒業後、大阪で映画の看板描きに弟子入り。63年、大阪ナンバデザイナー学院に入学。64年、今竹造形美術研究室に勤務。翌年(株)エーシー入社。1年間デザイン部に勤務ののちイラスト部へ移る。76年、イラストレーター集団(株)スプーン設立。動物を擬人化したイラストで知られ、「YOUNG JUMP」や「2年の科学」表紙など代表作多数。NHK「おかあさんといっしょ」ではキャラクターデザイン担当。現在は画業に専念、作品は「Kunio Gallery」(土曜・祝日定休)にて常設展示中。2008年カレンダーを9月25日に発売する。

作品

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クリエイター・ファイル

黄金時代を創り出した先覚者。 クリエイター・ファイル9“「イラストレーター」の仕事を広げた男”佐藤邦雄