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クリエイター・ファイル6“誰でもない誰かを想う 美術作家”中村ケンゴ

「主人公じゃない「自分以外」は自分のことでもある。」

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結局ぼくらは、その他大勢のうちのひとりでしかない。

銀座2丁目、急な階段を4階まであがると明るい空間に出た。
美術作家であり、アートディレクターとしても活躍する中村ケンゴさんが待つのは、目下ご自身が出展準備中のギャラリーだ。MEGUMI OGITA GALLERY(※)の白い壁に、中村さんの作品が映える。

ほんの数ヶ月前まで、中村さんの妹さんはJAMの一員だった。そのご縁で大いに親しみを覚える部分もあるのだが、その反面、かつてその作風に「シブヤ系日本画」との異名がつき、モダンアートと日本画を融合させた奇才アーティストだ。取材陣も気を引き締めて現場に向かった。
展示されていたのは『自分以外』のシリーズだ。同じテーマ、同じモチーフを使って色や形を変え、いくつものバリエーションが存在する。ひとつのテーマを、何年もの時間をかけて取り組むのが中村さんのやり方だ。この作品は、手塚治虫氏のマンガによく描かれる群衆シーンに登場する、無名のキャラクターのシルエットを集めびっしり並べたもの。「遠くから見ると模様みたいで人間には見えないんですけど、よく見ると、ひとりひとりのキャラクターが見えてくる。でも主人公じゃない。『自分以外』というタイトルなんだけど、他人から見れば自分以外というのは、自分のことでもある」。見方は人によるという。「ポジティブに見る人とネガティブに見る人と、両方あると思うんです。僕も両方見てるんです。どっちかよくわからない。わかっていたら、作品にする必要ないと思う」なるほど、と思った。

着想のきっかけは、前作にさかのぼる。『SPEECH BALL00N』のシリーズである。漫画の吹き出しを集めて文様的な絵にするなど、バリエーションも多い。また、ワークショップを催し一般の人々に吹き出しの中へ自分の夢や希望を書き込んでもらい、それらを百何十人という数まで集めて大きなポスターに仕上げた。そうして遠くから眺めると、夢や希望を書き込んだたくさんの吹き出しは文様のようになってしまい、まるで何も言っていないかのように見えるのだ。
「吹き出しの中に、ぜんぜんセリフは書かれていないんですよ。これだけいろんな形はあるんだけど、セリフは書いてない。すなわち、僕はこれだけ言いたいことがある、という言い方もできれば、こんなに言ってるけど実は何も言ってない、という言い方もできる」現実にもそういうことは起こる。言ってるはずが言えていない。その逆も然り。言葉遊びのようでいて、ゆるぎない事実を語る中村さんに、はっとするような厳しさを感じた。
「この吹き出しを描いている時に、今度はこれを言ってる人の方を描きたいな、と思ったんです。“誰でもない人”を描きたいなって思った時に『自分以外』の発想が出てきたんです」
たくさんのセリフを言っているが何も言えていない誰でもない誰か、それは結局、自分以外の自分。謎解きのようになってきた。
「結局自分は何が言いたいかっていうと、あんまり無いんですよ。無い、ってことを言ってるのかな、でも何か言うんだけど」中村さんの言葉は、自己完結型といおうか、他者の解説を必要としない。

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プロフィール

美術作家・現代アーティスト

中村ケンゴ(なかむら・けんご)

美術作家。1969年生まれ。多摩美術大学大学院修了。ワンルームマンションの間取り図をモンドリアンのように描く"COMPOSITION TOKYO"や、漫画の吹き出しを文様化したり擬人化した"SPEECH BALLOON"シリーズなど、日本画の技法を使いながらもポップな表現で描かれた絵画作品を制作。2006年は、アートフロントギャラリー(代官山)、Gallery360 °(青山)、横浜美術館『日本×画展(にほんガテン!)しょく発する6人』に出品。ワークショップやファッションブランドとのコラボレーションのほか、アートディレクターとしても活動。2007年4月には、COEARTと共同でオリジナルTシャツを制作。ご自身の作品をモチーフにしたデザインが好評だ。

中村ケンゴ×COEARTオリジナルTシャツ

ARTinDOJIMA/OSAKA2007

作品

※クリックすると大きな画像をご覧いただけます。

  • 作品1
  • 作品2
  • 作品3
  • 作品4
  • 作品5
  • 作品6
  • 作品7
  • 作品8
  • 作品9

クリエイターズ・チョイス

憧れのアーティストとつながりたいと願った学生時代。 クリエイターズ・チョイス6「在りし日の想いを運ぶオリジナルグッズ。」