作品になりかけ、のアイデアは頭の中で慎重に扱ってる。
集めているものがある。
やはり“誰でもない”人物の画像データである。
新聞の報道写真や旅行パンフのカットなどの、メインの被写体ではなく、たまたま写りこんだ通りすがりの名も無き人々だ。当然ピントも外れていて、印刷物からスキャンするためドットのかたまり状態だ。
「そのポスター作品を一度ハンブルグの地下鉄駅のホームで展示しました。でももっと大きな規模で見せたい。それも『自分以外』というタイトル。毎日毎日コレクションしてるんです。もう3年ぐらいやってるから、そうとうたまってます」可笑しそうに言う。たまってくると、サイズを調整して整理する。
「スナップ写真だって、5枚くらいだったらただのスナップ写真でしかないけど、1万枚あったらアートになるんですよ。そういうことなんです」
作品づくりから離れたところで、こだわりの品や集めているものはないか訊くと「ないんですよ。僕はコレクション趣味がなくて。ライター集めたり、バイクいじったりとか、男の子的な世界の話題にいつも入れないし、そういうところは、ほんとコンプレックスがあった。でも、ある人に言われたことがあるんですけど、けっきょくバカにしてたんでしょ、って。んなことはないんだけど、でもどうでもよかったんでしょうね。単に興味がない」
こだわりといえば、オリジナルデザインのTシャツ制作はこだわりの一種だ。「Tシャツに自分の作品をプリントするのは、なるべくたくさんの人とつながりたいから。ミュージシャンだったら2000円か3000円のCDがたぶん1万枚くらい出せるけど、アートの場合、5人くらいのコレクターに売れればオーケー、という世界でもあるから。バンダナとかポストカードも作りました」作品を手に入れられない人たちがアーティストとつながろうと思ったら、グッズを買うのが近道。中村さんご自身も、学生時代そういう経験があったそうだ。憧れの人とつながりたい、近づきたいと強く願う自分がいた。そして今、アートを発信する側になって、かつての自分の想いに応えようとしているかのように思える。
「知らない人にも、ぜんぜん着てほしいです。何かのきっかけになってくれれば。多分、着るとけっこうインパクトあると思うんですよ。何これ?と思われると思う。そういうところからコミュニケーションが始まればおもしろい。まぁ僕の名前はわからなくても、何それ?みたいな反応でも、じゅうぶん、僕は嬉しいです」言いながら、すでに嬉しそうな中村さんだった。
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プロフィール
美術作家・現代アーティスト
中村ケンゴ(なかむら・けんご)
美術作家。1969年生まれ。多摩美術大学大学院修了。ワンルームマンションの間取り図をモンドリアンのように描く"COMPOSITION TOKYO"や、漫画の吹き出しを文様化したり擬人化した"SPEECH BALLOON"シリーズなど、日本画の技法を使いながらもポップな表現で描かれた絵画作品を制作。2006年は、アートフロントギャラリー(代官山)、Gallery360 °(青山)、横浜美術館『日本×画展(にほんガテン!)しょく発する6人』に出品。ワークショップやファッションブランドとのコラボレーションのほか、アートディレクターとしても活動。2007年4月には、COEARTと共同でオリジナルTシャツを制作。ご自身の作品をモチーフにしたデザインが好評だ。
中村ケンゴドットコム
http://www.nakamurakengo.com/

