目の前の現実のリアルさを、写真にしたい。リアルさで言うたら、写真に勝るものはない。
韓国での撮影カットを見せてもらうと、人物が多い。日常の中でふとレンズを見つめたようなカットの数々。言葉の問題について訊ねると「首からね、カードさげてね、『私は日本から来ました。あなたの写真を撮らせてください』って」韓国語であらかじめ書いておくそうだ! しかし「僕は消極的な人間」ときっぱり言う。作品づくりで旅に出るのも「消極的に」出かけるそうだ。「しゃあないから行く。バランス感覚ってあるでしょ、自分の中に。ずっと家(事務所)に居ると、もう行かなしゃあないなーゆう感じになるんですよ」。放浪写真家の性か。
撮る瞬間の衝動ってなんだろう。訊ねると、「『あっ!』と思って撮るけど、なにが『あっ!』なのかは、分からへん」。
(分からないままでいい)と言っているようにも聞こえる。さらに聞くと、撮り方のアイデアも無くはないのだが、それよりも大切なことがあるという。「目の前の現実を撮る方がおもろい。その現実のリアルさを、写真にしたい」。
雑誌『旅学』から「アマゾンだったら森さんがいい」と撮影の依頼が来て、即決で承諾したという。その撮影中、蚊の大群に襲われマラリアにかかった。被写体として「すばらしい木」を夢中で撮っていたためだ。「もう足のまわりなんかに蚊がわーっと来て。そん時やねん、刺されたん!」「(筆者)へえ!そうなんですか」「…てゆうことを、帰国して、病院のベッドで思い出したんです」。おもしろい人なのだ。
「好奇心、強いですね。発見したとき楽しい。写真を撮ってて発見したことって、子どもみたいにうれしい」。森さんの「発見」とは、目の前の現実、その迫真のおもしろさ、だろうか。
もうひとつ、森さんが気になっているものがある。「水」だ。「水が好きなんです。水の心地よさや美しさ、ありがたさを感じる。人間も水でしょ。そういう感覚を伝えたい」。今、水を感じる所を撮りためている。いつか本にできるだろうかと、思いを巡らせているそうだ。「最後は、撮りたいと思う場所に住んで、毎日そこを眺めるような場所にいて、そこを撮る、みたいな暮らし」をしたいと言う。心のままにシャッターを押す日々。そのレンズの向こう側には何があるんだろう。気になってしかたがない。
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プロフィール
森善之写真事務所:フォトグラファー
森善之(もり・よしゆき)
1960年、神戸生まれ。大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒業。(株)大阪宣伝研究所写真部を経て、1991年森善之写真事務所を設立。雑誌『旅学』などにより、旅して撮る写真家として知られる。和楽をはじめ出版関係の撮影多数。京都在住。
韓人像(オリンパスギャラリー/新宿)、新鋭展 98参加(奈良市写真美術館)、CYCLE & CIRCLE(MOLE/東京)(DOT/京都)、PRINTS 銀粒子の誘惑 参加(ギャラリーヒルゲート/京都)、まほろ(La chambre claire/パリ)、三部作(WALL/東京)(アルテリブレ/大阪)、アートイベント「PROJECT 629」参加(海岸通ギャラリー・CASO/大阪)
七雲 nanakumo
http://www.nanakumo.net/