グラフィックデザイナーになったのは芝居のポスターやチラシを作りたかったから。
東さんと言えば舞台やテレビの宣伝広告専門の人という認識が定着している。グラフィックデザイナーにして、そういう人は少ない。今活躍している有名グラフィックデザイナーたちを見ても、グラフィックデザインだけにとどまらず「携帯電話までデザインしました」というオールマイティさを売りにしているのが普通だ。
どうして芝居の広告デザインばかりするのかと聞くと、なんの澱みもなく「好きやからや」との答え。そもそもグラフィックデザイナーになったきっかけが「芝居が好きで、芝居のポスターとかチラシが作りたかったから」・・・そう思わせた芝居の宣伝美術を最初に見たのが横尾忠則のデザインした『天井桟敷』や『状況劇場』のポスター。もともとイラストレーターになろうかと考えていたが「他人から言われた物を描くのはいや」「絵は仕事というより神聖なものにしておきたい」と考えなおした。
でも好きな芝居の仕事ばかりでは食っていけない。もちろん、今までには東さんも芝居以外の仕事もこなしてきた。中にはやりたくない仕事もあったのでは?と聞いてみた。「もちろんある。これはちょっと俺には無理やわっていうやつもあった」しかし若い頃からそんなわがままを通していけるワケもない。「いやな仕事が入っきます。さて、どうやったら面白くなるやろか?・・・そう、考えるようにしたら嫌な仕事はなくなった」と語る。
今では、憧れていた芝居の仕事がほとんど。宣伝美術とは「劇団の作家や座長、演出家のイメージをうまいこと一枚のビジュアルに表現してあげること。最近では『この作品は、學ちゃんやろ』とか言われて仕事が入って来る。劇場に行けばチラシが束になっておいてあるけど『これは學ちゃんがつくったもの』とすぐ分かると言うてもらっている」。仕事を選びたかった若者が信念を持ち続け、いつしか仕事に選ばれる大御所になっていた。
プロフィール
株式会社一八八:アートディレクター・絵師
東學(あずま・がく)
1963年、京都生まれ。演劇関連の宣伝美術を得意とする東さん。『演劇フライヤーコレクション』(PIE BOOKS)という本には、かの維新派を初め、50点余りのチラシ・グラフィックスが掲載されるほどで、演劇界においてもなくてはならない存在。絵師として活動の方が古く、アメリカンハイスクール時代に描いた作品「フランス人形」はNYのメトロポリタン美術館に永久保存されている。墨だけで艶かしい女体を描く現代の浮世絵師。父は扇絵師の東笙蒼さん。
株式会社一八八
http://www.188.jp
プロフィール
(東學墨画集『天妖』、07年5月パルコ出版より発売)
