アートレポート「Project 629」
2008.07.04 Friday
怪しい女たち、花たちが
咲き乱れる遊郭が梅田に登場。
(株)一八八+アサヒ精版印刷が主宰するアートイベント、Project 629を大阪、梅田のど真ん中、HEP HALLで見てきた。メルマガでもご紹介した通り、このイベントではClippin JAMの記念すべきVol.1にご登場いただいた東學さんの作品をメインに、今号登場の花道みささぎ流家元の片桐功敦さんの作品の競演が見られた。さらに舞台美術家池田ともゆき氏が会場美術を担当。浮世絵と花道と舞台美術の異種格闘技のような企画でありながら、見事に絡み合って東さんの描く「天妖」の世界を創り出していた。

まずは美術展の会場があれほど描かれている女性たちの世界、つまり遊郭にすることに成功していたことに驚いた。真っ黒な会場では天井からは無数の赤い角材がぶら下がり、手で払いのければのれんのように通り抜けられる。その、ゆらゆらと垂れ下がる角材が遊郭を外から除くような効果も創り出し、また内側に入ってしまえば遊女たちと向き合い、逃れられないような圧迫感も与えていた。この圧迫感こそ、見事だと思った。東さんの作品は今までも何度か見てきた。普通は好きなだけ近づいたり、好きなだけ離れたり、自分で間合いを作れる観方だった。一定の近さを強要されるこの角材の通路は入ってしまっては、ただでは出て来れない遊郭に迷い込んだようで、恐ろしさもあった。天妖たちに捕まって離れたいのに離れられない、身を滅ぼしていく男の本性のような物を感じる。東さんの絵の危ない部分が今まで以上に分かった気がした。
舞台美術は東作品の本当の怪しさを教えてくれるようだったが、天妖たちと張り合っていたのが片桐さんの「花」だった。遊郭の一角に突如表れる大きな花台に生けられた大量のカサブランカは、その大輪の花を開く前のつぼみであり、すべてのつぼみが開くことを禁じられているようにひとつ一つ天井から垂らされたひもで縛られている。単純に言うとSM的な怪しさ、しかし開くはずの花を抑制するからこそ、そこにみなぎる生命力や開いた時の美しさをイマジネーションさせ、想像の中で美しさが広がるように思えた。さらに会場の奥には暗い遊郭から一転して白い部屋が現れ、NHKハイビジョンでも紹介されていた「風之女神・雷之女神」を初め、数点の作品が並んでいた。そこに降り注ぐ光が妙に神々しい。天を見ると吊るされた竹筒に生けられた大量の白いかすみ草のすき間を通って光が地上に降りて来ていた。まるで雲のような花の固まりが美しい光のムラをつくり、まるで天国に迷い込んだよう。しかし東作品の女たちがすんなりと天女のワケがなく、相変わらず妖艶で怪しく、しかし明るい光のせいで危うく気を許してしまいそうになるところが一層怖い。これも絵の世界と舞台美術と花道の演出がすばらしくうまく成功している好例だなーと思った。
こんな風に3種を一体で堪能できる美術展って世界で初めてなのでは?東さん、片桐さん、池田さん、そして村上さんお疲れさまでした。本当にいい物を見せていただきました。
posted by KOJI YAMAMOTO



