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2007年11月08日のエントリー

台湾現代アート事情レポート part.1

故宮博物館だけじゃない!
台北市立美術館の大規模展示内容。

Clippin Jamのスタッフは社員旅行で台湾へ行くことになった。
せっかく海外に行くのであれば現地のクリエーター事情はどうなのだろうと見てレポートしたいと思った。しかし急遽思いついた為に取材申し込みをできていなかったので残念ながら作者にお話を聞けたり、写真を撮れたりした訳ではないのでご了承を。

台北市立美術館

まず日本人にとって台湾で芸術と言えば必ず市内観光に入っている故宮博物館となるはず。しかし現代アート事情とはかけ離れるのでまず台北市立美術館へ行くことに。アジア最大級と言うだけあって広大な敷地面積の現代的な建物だった。しかし平日と言うこともあって人は極めて少ない。と、言うことは海外の観光客はほぼ来ないと言うことだろう。ある意味すごい穴場である。この規模の美術館だと日本や西洋では海外作家の作品展や企画展なども催されていたりするものだが、ここではほぼ台湾出身のアーティストが中心のようだった。台湾のアートを実感したいという目的からは最適と言える。しかも2Fの常設展示以外はB1と1F、3Fとそれぞれ内容豊富な企画展示が見られた。しかも3Fは3人の作家の個展、回顧展などでその膨大な展示量には文句なく見応え十分。そのなかで印象的だった展示、作品についていくつか紹介しよう。

台北市立美術館

ひとつ目は台湾ではおそらく大御所であろう写真家、ケ南光(Deng Nanguang 1907-1971)氏の回顧展、「ケ南光百歳記念展」。現在活躍中の作家ではないが台湾にもこういった写真家がいたんだと興味深かった。作品は街角や人々の生活、ポートレートなど、とにかく人をとりまく歴史を撮り続けた人のようだ。ご存知の通り台湾はその昔、日本が統治していた。彼が生きていた時代では1945年の日本の敗戦前とその後の時代では大きく違いがあるはず。そのことに注意しながら見ると1945年以前の街の風景には日本髪、和装姿の女性が多く見られる。またポートレートでは西洋的なファッションの女性がポーズとる。どの女性も決して鬱積しておらず、あかるく、または凛とした表情をしていると感じた。それが日本の入植者なのか日本教育を受けた台湾の人たちなのかは分からない。彼の生活水準が一般人と大きく違うからなのかもしれないが決して時代の暗部を映し出そうとしている作風ではなかった。その描写は日本統治が終わった後の時代も変わらない。人々はどの時代も活力に溢れている。こういった写真家の作品を現地で見られたことは、言葉よりもリアルな歴史の空気を感じられた。

次に独特な絵画手法を見せる画家、紅漢東氏(Chiing Hang-Tung)。プロフィールが載っていると思ってもらったパンフレットが中国語でその素性がよくわからない。台湾のお年寄りは日本語が分かると言うので見るからに年配のスタッフらしき方に「この作家は独特な絵ですが絵本などを描いていますか?」と質問したらじつは美術館の者ではないと前置きして美術館の人に現地の言葉でいろいろ質問してくれたのだが「この人は漫画は描いてないみたいです」とどこかで意味が変わってしまったようで詳しく聞くことを諦めた。その独特の作風とは民芸的な絵でありながらとても非現実的な感じがする。あくまで個人的な感想だがなんとなく東洋のシャガールという感じがした。そしてなにより圧倒的な多作である。広い展示会場にどこまでつづくんだと思うくらい作品展示が続いていた。ただし後半になるとなんか少しタッチが雑になって色も急に褪せてしまったと感じたら本物の「絵」ではなくカラーコピー?!今までOil on Canvasと書かれていた作品説明が1970年代に入るとComputer-aided Print-outとなっている。'71年でComputerでこんなタッチの絵画を描いていたなんて「早い!」と思った。それが本当に70年代にパソコンを使って描いたのかどうかもじつは不明だが。

この2つの作家の膨大な数の作品群をもってしても埋まりきらずもう一人別の若い作家の小さな個展をやっている広大な3Fを離れ、下に行くと所蔵展示の2Fでは膨大な数の台湾芸術家のアーカイブが見られる。わりと古典的な作家から洋画、写真などバラエティ豊かだ。
1Fに移ると「Mind Space Exploring the possibilities」と題されたモダンアートの作家たちを集めた企画展が催されていた。彫刻やインスタレーション、音や映像など様々な手法で元気なアートシーンがそこにはあった。どこの国でもないボーダレスな雰囲気を感じた。

地下では映像をメインとした李・雅諾氏(Lee Yanor 1963-)の「憶域-Memory Fields」と題された個展スペースが興味を引いた。ハイファ生まれとあるので彼はイスラエル出身のようだ。メインの作品がプロジェクターで投影された映像9画面から構成される作品。横一列に並べられているので当然一度に視野に入らないくらいの大きな作品である。私が見たのは子供たちが海で遊ぶ古いフィルムのイメージからだった。それがいつの間にか水面を打つ心地よい水音とシーンに変わって行き、泳ぐ魚、フラメンコダンサーやシロクマなどところどころ画面が変わったかと思うと全面的に変わって行き・・・なんて言葉で説明するのがもどかしい。ただ見ていてここちよい、飽きない「いい」作品だった。何かメッセージでもあるのかとはじめ見入ってしまったが、そのうちそんなことどうでもよくなった。ただ心地よい映像を見ていたかった。映像に仕事で関わっているから言えることだが展示されている映像をじっと見続けるには何か特別なチカラが必要である。それがただ心地よい、または懐かしい、面白いという感覚で最後まで見続けられたのは珍しいと思った。そんな感じで台湾の美術事情をほんの少しかいま見られた台北市立美術館だった。

旅の醍醐味として有名な観光地やショッピングも楽しいが、余裕があればこういった現地ならではの美術館を訪れてみるのはどうだろう。

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