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2007年10月19日のエントリー

憧れの八木氏と…。

八木さんがスタジオの階段を上がってこられた時、日の光がたくさん入る穏やかなスタジオは一瞬にしてクリーム色から白色へ、空気の色が変ったのを覚えています。それは心地いい緊張感と、八木さんから醸し出される独特な空気、薫りたつ人とはまさにこんな感じ。お目にかかれた瞬間は、信じられない気持ちで最高潮に胸が高鳴りました。自分の人生の中で、あこがれの遠い存在にお会いする奇跡なんて、想像もつかないことでしたから。

私が八木さんを知ったのは1冊の本からでした。
「八木保の仕事と周辺」という本を開いては、仕事への姿勢や、考え方を学び、時には自分のモチベーションを上げるお守りとなり、私にとって欠かせない、たくさんお世話になった1冊です。
中でも『マテリアルボックス』を用いた独自のプレゼンテーション方法に私は深く感銘を受けたことを覚えています。それは伝えたい事をダイレクトに伝える手段で、ご自身のたくさんの経験の中で生まれた、言葉より早く、明確に相手とイメージを共有する方法の最終形。日本のみならず世界で活躍する八木さんだからこそ生み出せたコミュニケーション方法。

取材中とても印象に残っている言葉で覚えているのは、言葉で伝えきれないなら伝えたいメッセージを、スケッチや色、身近に存在する形あるものに置き換えて相手に話しかけたらいい。という言葉です。
文化、世代、環境など互いのあらゆる壁をとりはらうのは、言葉ではなくイメージ。八木さんのその言葉は、マテリアルボックスというプレゼンテーション方法と深くつながり、八木さんの考えかたそのものではないのかと感じたのです。

デザイナーという自分の立場でいうならば、アイデアや創造する力(クリエイティブ)でクライアントと会話をするということ。忙しさの中に忘れてきてしまっていたクリエイティブという言葉の意味。
クリエイティブという言葉にはとても広い意味が込められているけれど、その広い意味の中で、大切にしていきたいクリエイティブとは、豊かさを養い、創造すること。そしてそれを伝える術を持つこと。まさに言葉の壁を越えて共感させる力。八木さんの仕事への姿勢は、その事をゆるぎなくいつも私に指し示してくれていました。

言葉って苦手、うまく伝わらなくって難しい。でもそうか、苦手な手段で伝えるよりも得意な手段で伝える方が、コミュニケーションははるかに円滑。それに、イメージつまり創造する力は私が無限の可能性を秘めている個性にもなりうる。そんな事を考えると相手とイメージを共感するってすごくワクワクする。

八木さんが大切にしている考え方に、今までは本の中で自分なりに答えを探していたけれどあの時、あらためて八木さんの考え方に共鳴でき、同じ時間を共有できた事をとても光栄に思いました。二度と会えない方にもっともっと話したいことは会話の中あったのに。もう二度と戻らない時間。
一生の宝物にします。

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